ピック・デュ・フレーヌ(2807m)頂上へ
同僚S君との日帰りハイキング。行き先は見た目がバランスとれていてきれいなぁと前々から思っていたベルドンヌ山塊北部のピック・デュ・フレーヌです。2807mとそこまで高い山ではないものの、ベルドンヌ全体がそうなのですが野性的な景色が多く高い山の雰囲気を持っています。そして標高にしては雪が長く残る山塊としも知られています。
通過地点のヴァレット湖(2315m)。地図にはここまでしかコースが載っていません。この日の朝唯一出会った3人組のハイキング客はこの湖が目的地だと言っていました。
わたしもつい2,3か月前までピック・デュ・フレーヌにはアルピニスムでないと登れないと思い込んでいたのです。ネットで調べると湖以降も注意は必要だけれど、雪が少なくなる7月後半から9月くらいは特別な装備はなくても登ることが可能、と分かったのです。落石は多いのでヘルメットはあったほうがよいし、とても急なので7月中くらいまではアイゼンとピッケルが必要、とも。ハイキングで登れるギリギリのレベルの山のようですが雪がほぼゼロの今の時期、一番登りやすいと言えます。
さっきまで快晴だったのに湖に着く直前からガスってきました。これから目指す方向もあまりよく見えません。でも近くの地形は見えるし、湖から峠までは真西に進めばよいことも分かっています。ケルンは期待に反してほとんどありませんが、窪んだところよりはこの目の前の盛り上がっててちょっと尾根っぽくなった場所を登るのが普通かと思うので早速アタックします。
このように急にガスがなくなったりする瞬間もあります。すぐにまた戻って来るのですが。後ろから二人組の男性ハイキング客が歩いてきました。歩くスピード、速い!!少し立ち話をしましたがすぐ近くに住んでいてこのコースは初めてだけどピック・デュ・フレーヌ自体には別の面から登ったことがあるとのことでした。それがアルピニスムでなのかハイキングでなのかは聞きませんでしたが、何せわたしはネットでこちらから上がるコースしか見つけられませんでした。
湖がどんどん小さくなっていきます。
雪渓の隣を歩きます。今の時期、古い雪だともっと茶色っぽい(下の方の色がそうですが)ので、新雪でしょう。フランスじゅうが悪天候だった10日ほど前にベルドンヌでは標高2000mのスキー場にもかなり積もっていたのをニュースで見ました。2000mのことろではもう融けてしまっただろうけど、これはもともとあった雪渓の上に積もったものだと思われます。
ケルン、ほとんど全くありません(+_+) 二人組は初めは姿が見えていましたがやがてガスの中見えなくなり、ガスが明けるとだいぶ先に進んでしまったみたいで姿は見当たりませんでした。
でも幸い地形が分かりやすい形をしているのでこの峠っぽくなってる方向を目指して下から登ってきました。
不安定で歩きにくいタイプのガレ場です。
方向は大体分かるものの、どこを歩くのがベストなのかが分かりにくいです。道があってないような山にも時々行くのでそういう勘は結構養われてきているつもりでしたが、かなり難しい。いつもなら道がないように見えてもケルンがあるか、もしなかったにしても「ここしかないだろ」と思った方に行くとまたつづけさまに「やっぱここだろ」ってのがどんどん連続して現れるものなのですが、ここには裏切られっぱなしでした。ほんとにどこ通っても通りにくい、または不可能、なところの連続なのです。要は人が大勢登る山でない上、崩れやすいガレ場であるために人が通った跡が残らないのでしょう。
わたし達も石をザラザラと崩しながら登っている感じでした。
振り返ると、雲海の高さギリギリくらいに来ていました。
遠くにはモンブランも顔を出しています。感動~!
S君が撮ってくれました。
ときどきガレ場の合間にこのような大きな岩があり、少なくとも滑ることはないので(雨だと危なそうですが)、少し立ち止まって呼吸を整えてリラックスすることができます。
どこを登ればいいのかまるで分からないので適当です。何度か、続きがなくて(危なすぎて)逆戻りして他の面から再挑戦、というようなこともありました。なにせ急なため先がどうなっているのか見えないのです。
地図と実際の地形を見た大体の感じでは、このまままっすぐ登って適当なところで右に向かう、ってことです(;´∀`)
ヤッホーー♬雲海より上に来ました💙
ガラガラ崩れるガレ場(;´Д`)
しかも急です。
1歩1歩がズルズルでストレスです。わたしが滑らせた石や岩がかなり下まで落ちていきます。下を誰も歩いてないみたいだからいいようなものの、ヘルメットあったほうがいいですね。わたしもS君から少し距離を置いて登っていきました。
「どっちだと思う~?」「さぁ」「じゃちょっと右らへん目指すよ」・・・な感じで進みます。
すごい登ってきました✨ 奥にモンブラン。
雲を抜けた後は晴天です。
息を整えるのに10秒ほどのプチ休憩を何度もしますが、安定の悪いところがほとんどなので気を緩めるとバランス崩して危ないので、休憩していても足はめっちゃ力入れてる感じです。
あと、このエリアの困ったことは地面が滑りやすいガレ場であることに加え、山を構成する岩自体が脆く、剝がれやすいのです。持ってた岩がズルっと外れたり、足を掛けようと体重をかけかけた瞬間、崩れたり、ということの連続で本当に怖かったです。ほんとにこの岩は動かないのか、剥がれないのか確かめつつ登っていくので思いのほか時間がかかりました。さらに言うと、体重をかけたあと、別の岩に移動しようと踏ん張る瞬間にも崩れるので、その場合次に踏むべき場所(避難先)も周りに見つけておく、という感じです。ハイキングサイトに「rochers de mauvaise qualité 質の悪い岩」と表現されていましたが、ここまでとは・・間違いなく今まで登った山の中でダントツに一番ボロボロの岩でした(-_-;)
この日、3箇所ほど特に怖いところがあったのですが、そのナンバーワンはここでした。
最初は良かったのですが・・・
え・・ここ通る・・?(◎_◎;)
危なすぎて一番怖いところは写真がありません。足の踏み場もほとんどないようなところ(軽く断崖。まぁ一番下まで落ちるわけじゃないけど半歩でも間違うとほんとに危ない)で手でつかむ岩もあまりしっかりなく、そこを左側の岩に張り付くようにしてぐるっと登りました。もちろん本当に無理だと思ったらそれ以上進まずにそこで引き返して別のパターンを探してたとは思います。何とか行けそうだと思ったから渡り切ったわけですが(S君が大体どこ通ったか見てるし)生きた心地がしませんでした。あとからS君に言いました。「絶対左側にもっとましな場所あったと思う。わたし帰りはここ通りたくないから」・・実際、降りてきたときはこんな怖いとこでなくもう少し安定感のあるところを通りました。
下りは感覚的には怖いけど、地形の全体像はよく見えるのでどこを通ればよいか分かりやすいのは助かります。
あと少しっぽいです✨
頂上まであとほんの一息、のところで怖いところその2が。
良さげなところを通ったら、最後の最後が無理だったため途中まで下りて訂正しようと試みたものの、そちらも滑りやすい傾いた平たい岩の上をどこも掴むところなしに数歩歩かないといけなかったのです。最近靴底が少し摺り減ってしまった感じで新品の頃ほど岩に密着してくれる感覚がないことも手伝って、たったの数歩進む自信がありません。諦めてもっと下まで下りて別のところから登りなおしました。
もう大丈夫です。S君の声がします。「おーーい、何やってんの?大丈夫?」どうやらS君は初めから一番行きやすいところを通ったみたいで、わたしが何をそんなに手こずってんだか分からん様子でした(^^;
一足先に頂上に着いてたS君。「何しとったん?」
ピック・デュ・フレーヌ頂上に到着\(^_^)/
ヴァノワーズの最高峰、グランド・カッス(3855m)が雲から出たり隠れたり。
グランド・ルース山塊とセルス山塊。一番出っ張ってる3つはエギーユ・ダルヴ(3514m)。アルピニストにしか登れない厳しい山ですが、そのすぐ左のエギーユ・ド・レぺスール(3230m)には昨年晩秋、その少し左奥のグラン・ガリビエ(3228m)には今月登ったばかりです。
そしてモン・ブラン。
S君とわたしと持って来たサラミ、チーズ、パンを出してきてお昼ご飯です。
わたしたちが宴を始めて間もなく、若いハイキング客の男性が登ってきました。
「もうすぐだ、ほとんど着いたなって思ったら、最後の最後、どーしても無理でね。だいぶ下りてから登り直さなきゃならなかったよ」・・・わたしと同じところで間違ったみたいですΣ(´∀`;) なんか、嬉しい♪
ハイキング客の男性に撮ってもらいました。
次回(最終回)に続きます。