フランスで山歩き

仏リヨン在住、40歳を過ぎて再び山に目覚めた元ワンゲル部員。週末になるといそいそと山に出かけています。

プロヴァンス地方へ日帰りでドライブ

日曜日に友達と久しぶりにプロヴァンス地方に行ってきました。観光客受けする可愛らしい村やブドウ畑にオリーブ園、温暖な気候・・・ととっても魅力的な場所なのですが、夏の間はヨーロッパはもとより世界中から集まる観光客で溢れかえり、行き帰りの道も渋滞するし恐ろしくてとても行けません。
先週末は土曜午後の仕事の後から友達のうちに泊まっていたのですが、久しぶりに南仏にでも行くか~ってことになり、はじめは少し遠いけどピーター・メイルの「南仏プロヴァンスの12か月」の舞台となり日本でも有名になったリュベロン地方まで行こうということになりました。復活祭の時期に一度、初夏に一度行ったことがありますが可愛い村がリュベロン山地(といっても丘陵地といった感じ)に点在し、なかなかフォトジェニックな地方です。南だけあって気候が温暖なのも冬には嬉しい。
が、朝になってみると友達んちから高速までの道も、高速に乗ってからも激しい濃霧でゆっくりにしか走れません。かなり時間をロスしつつ半分くらい来たときにわたしが提案。「今日はもう少し近いところにしよう、プロヴァンスはプロヴァンスでも」


運転大好きなわたしですが今日は助手席です。


ヌガーで有名なモンテリマールから少し行ったボレーヌという町で高速を下ります。リヨンから南に下りる高速A7はローヌ河に平行していることもあり霧が立ち込めていましたが、高速を出てからは晴れ間が広がってきました。
葉が落ちてしまっていて分かりにくいですが右も左も葡萄畑です。このあたりはコート・デュ・ローヌまたはコート・デュ・ローヌ・ヴィラージュのワインになります。


わたしの好きなこの辺りのワインのひとつ、ケランヌ(Cairanne)のブドウ畑に来ました。村の中心部から外れたこの先に昔買っておいしかった生産者があるのですが、前もって連絡もしなかったし閉まってました😢
それ以前に、シーズンオフのしかも日曜日。春から秋にはツーリストでごった返す地方ですが、ここらの人たちにとってはしばし休憩したい時期なのかもしれません。ほとんどの小さな生産者のカーヴは閉まっている様子でした。


少なくとも樹齢30年以上と思われる古い株。このあたりは赤はグルナッシュとシラーがメインに植えられています。
摘み忘れか、わざとか、いくらかブドウが残っています。AOCの呼称制度ではヘクタール当たりの収穫量も制限されているので(質が落ちるのを防ぐため)わざと残すこともあるのです。もちろんつまみ食いしましたが、おいしい~~💓 やはりおいしい葡萄からおいしいワインができるんですね・・・
ワイヤーが樹と樹の間に通され、機械でのブドウ摘み仕様に植えられている葡萄畑も多いですが、ここらの古いブドウ畑(いわゆるヴィエイユ・ヴィーニュ vieilles vignes)では伝統的な手作業でのブドウ摘みが行われています。


仕方ないので村の中心部に戻り、開いていると唯一はっきり分かった農協のカーヴに入ります。


中は立派でモダン。最近農協もおしゃれな内装のブティックとテイスティングスペースを持ったところが増えてきてるように思います。


ケランヌは一般的に10ユーロ前後(生産者から直接買った場合)することが多いのですが、2015年のもので6,95ユーロという破格のものがあり、聞くとAOCの呼称制度で細かい規則の変更があり、既に瓶詰めしてしまったもののラベルの表示と違いが出来てしまったため、安く売ってるそう。一般的にグルナッシュなど主体の南のワインは夏が暑かった年のものはおいしいし(2015年夏は猛暑だった)、まだ飲むには早すぎるとはいえ、味見してみるとタンニンは強いものの嫌な感じの鋭いタンニンではないのでおいしくなりそうな予感・・・1カートン(6本)買っておきました。
我が家はチーズ同様、飲み頃に差し掛かって早く飲まないといけないワインがいっぱいあるのですぐに飲まなくていいワインのほうが助かるのです(´▽`) 


もう少し南の有名な赤ワイン、ジゴンダスもありましたが、こちらは結構高いのでまた今度の機会に。これも大好きなワインのひとつですが次回ぜひジゴンダス村まで行って買いたいものです。


ケランヌから車でわずか10分、隣村のひとつラストー(Rasteau)村へ。
困ったことに、ここのワインもわたしが目がないワインのひとつです(^-^;


今日はもう小さな生産者は諦めて農協に直行です。
友達「えっ、まだ買うの・・・?(さっきも買ったのに?)(家に200本ちかくあるのに?)」
だって・・・大好きなワインなんだもの~~。。。現地に来ているのに手ぶらで帰るには惜しすぎます。


駐車場がやたら満車だな~ 前になんか色々屋台出てるし・・と思ってたら、なんと農協カーヴ内で地方物産展をやってました。食べ物もあれば、クリスマス関係のデコレーションに使う民芸品などを売る屋台もあり、お昼時ということもあり賑わっています。駐車場の車のナンバーを見る限りほとんどみんな地元の人たちのようです。クリスマスから新年は家族や友達と集まることが多くなるしみんな普段以上においしいものを買いたい季節なのでこういうフェアは12月に特に多くみられます。


これは南西部はジェルス県からやって来た鴨農家。フォアグラを始めいろんな鴨製品を売っていました。何気に味見した鴨のリエット(鴨の脂煮をほぐしてペースト状にしたもの)が激ウマで衝動買いしてしまいました。ここら辺の地方の濃い赤ワインに合いそう~(≧∇≦)


ラストーの農協は以前にも来たことがありますがなかなかレベルが高いです。ラストーだけでもいくつも種類があって高い目のやつはそれなりにおいしいです。


ラストーには甘口のアペリティフ系ワインもあります。
この地方の甘口ワインで有名なものに、ラストー村から少し南に下りたところのボーム・ド・ヴニーズ村のミュスカがあります。が、今回は時間もお金も地下カーヴでの置き場所もないのでそちらには行きません(;´∀`) あと個人的に甘いワインはあんまり好きでなくて買うとしても来客用(好きな人も多いので)かひとんちに持っていく用です。


ラストー、久しぶりにいろいろ試したけど多分前に買ったことがあるのと同じもの、中ぐらいの値段のやつが気に入りました。バランスがパーフェクトです。もちろん値段を踏まえたうえで。こちらは2011年のもので今すぐにでも飲めてあと3~4年は置いててもまあ大丈夫というもの。とりあえず将来の味とか考えなくてもダイレクトにおいしかったので6本。



お金も散財したことだしもうワインはここでやめて観光に徹します。ローマ時代から存在する古い町、ヴェゾン・ラ・ロメーヌへ。
夏はツーリストでいっぱいになる村の絵になる細い路地も閑散としています。


村の高台にはお城があります。お城といってもロワール河沿いなどにあるルネサンス期の優雅なお城ではなく、牢獄もある要塞系の中世のシンプルなお城です。シーズンオフで観光客も少ないために閉まっていましたが、お城の前の広場からの眺めはよかったです。こういう中世のお城は日本でもそうですが見晴らしがよくかつ責められにくい高台に作られています。対して要塞としての機能はないルネサンス期以降のお城はアクセスのよい平地に建てられています。
中央に写っているのはこの辺りで一番高いヴァントゥー山(Mont Ventoux, 1911m)。頂上はほんの少し雪を被っていました。


午後1時をまわってお腹も空いてきました。旧市街地から町の中心地に戻る途中に可愛い店がありました。わたし的には観光エリアにある店はツーリスト騙しの可能性も高いのでちょっと疑心暗鬼だったのですが、店の前の黒板を見て友達が「ここ良さそう、お品書きは少ないけど、ひとつひとつは凝ってそう」
そうです、真面目な店(小さい店の場合)の特徴の一つとして「メニューにあまりたくさん選択肢がない」というのがあります。調理人がひとりやふたりしかいないのにやたらバリエーション豊かな店はその場で材料から調理しておらず冷凍やインスタントを活用している可能性が高いというのが理由です。


中もめっちゃ可愛い😻 フィガロ・ジャポンやエルのプロヴァンス特集にいつ登場してもおかしくありません。



21ユーロの本日のメニューから友達は菊芋のスープにフォアグラの小さなソテーが載ったもの、わたしは冬野菜とコンテチーズのキッシュ。メインにはふたりともアカシカの赤ワインソース。デザートは写真がないのですがオレンジケーキ添えの冬フルーツのサラダ。
地元の赤ワイン、ヴァントゥーをグラスワインで。タンニンがしっかりしており鹿肉にぴったりでした。しかも同じワインがソースにも使われているという(#^^#)


さてお腹もいっぱい、いい店に出会えたことに感謝しつつヴェゾン・ラ・ロメーヌの町を後にします。帰る方向的に寄り道しやすいグリニャン(Grignan)の町に向かいます。


グリニャンの町。周りはラベンダー畑なので7月前半のラベンダーの季節にはそれは素敵な光景です。
ここの少し手前からヴォークリューズ県(プロヴァンス・アルプ・コートダジュール地方)からドローム県(ローヌ・アルプ地方)に入っています。


グリニャンの町は17世紀の書簡文学「セヴィニエ夫人の手紙」でよく知られています。
グリニャン伯に嫁いだ愛娘に宛てた手紙の数々が17世紀の宮廷や世の中の出来事の半ば公的な記録として保存、閲覧されており様子を知る貴重な資料となっています。メディアやインターネットのなかった時代のこと、彼女の手紙により田舎に移り住んだ娘は当時のニュースに詳しくなれたことでしょう。
うち有名なエピソードのひとつに、近年映画化されドパルデューが主演した「ヴァテル」があります。ルイ14世の来館のために行われたパリ郊外シャンティイー城での大宴会の際、食材の魚の配達が遅れ(たと思い込み)命を絶った宮廷料理人・ヴァテルの話です。


話が逸れましたが、グリニャンの町を歩くことにします。意外なことにこちらの町のほうが先ほどのヴェゾンの町よりずっと観光客の姿がありました。といってもボチボチ、といった程度ですが。


小高い丘と一体化した村の高台にある格調高い教会に入ります。


クリスマスが近いのでクレッシュ(キリストの生誕場面を再現したもの)が教会内に飾られていました。この馬小屋の左側はなんとグリニャンの町やその周辺までがミニチュアで再現されており、これはキリストの生誕とはもはやあんまり関係ない誰かの趣味というかコレクションの披露のような気がしました(^^;)
ところで、クレッシュに使われる人形、サントンと呼ばれますがこれはプロヴァンス(といっても正確にはもう少し南のあたり)の名産品のひとつです。


もっと上がると町の一番高い部分に到着します。ここがお城になっています。こちらは開いていましたが、もう日も低くなりつつあるので中には入らず景色だけ楽しんでゆっくり下りることにします。


書簡文学で知られる町だけあって、図書館風カフェがありました。


あとは南仏名物のヌガーを買って帰途につきます。


午後6時45分、帰宅。ヌガーとかは別に場所も取らないしいいけど、また厄介者を持ち帰ってしまった・・・(ケランヌ6本とラストー6本)
サンタさん、ワイン棚をプレゼントしてください(;´Д`)

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