フランスで山歩き

仏リヨン在住、40歳を過ぎて再び山に目覚めた元ワンゲル部員。週末になるといそいそと山に出かけています。

チーズ農家にて研修

リハビリスキー合宿を何度も開催してくれている山スキーヤーのOさんのお友達に酪農家のSさんという方がいます。


Sさんは今までミルクを地元の小さなチーズ会社に売っていましたが、自分のところでチーズを作ることに決めました。大工仕事が得意で面倒見の良いOさんはよく色んな手伝いでSさんの農家に行っています。


タイトルの「研修」というのは大袈裟ですが、チーズが大好きなわたしはこの冬から春にかけて何度もチーズ作りの現場に入れていただきました。


外出制限の毎日でこれといった書くこともないので(;^_^A 今日はその農家のことについて書いてみたいと思います。


谷の奥にあるクレヴー村。
日陰になっている時間が長く、とっても雪深くて寒いです(;´Д`)
以下、写真は主に2月のもので、今はここまで雪は残っていません。


農家と住居が同じ建物です。これは住居スペースで、一部は民宿にしてあります。
夏はハイキング客、冬はスキー客が来るそうです。
ちなみに農家のすぐ隣は小さなスキー場になっています。


さてさて、本題の農家スペースですよ🎵


従業員のDさん。
牛さんは50頭ほどいて、アボンダンス種がほとんどで少しタリーヌ種もいます。どちらもサヴォア地方の品種で質のよいミルクを出します。


搾乳に使うパイプ。
搾乳は朝夕2度行われます。


手前がSさん。
奥はFさんという元・酪農家の方でSさんに伝統的なチーズ作りを教えるために何度も出向いてきておられました。


酪農学校で教えている近代的なチーズ作りと放牧も行う伝統的なチーズ作りは結構違うそうで、Sさんは夏には近くの山で放牧も行っているし、せっかくなら古来からのチーズ作り習いたいと思ったらしいです。


Fさんは40年間放牧と伝統的なチーズ作りを行ってきて昨年リタイアされたそう。若い時に現場で「お年寄り」から手法を習ったので、自分も若い世代に伝えたい、と思っているんだとか。


銅鍋で搾りたてのミルクを温めます。
この「搾りたて」というのがかなり大事なんだそうです。ストックしておくとおいしいチーズになる力が落ちてしまうんだとか。搾乳したてのミルクですぐにチーズ作りに取り掛かれる小規模農家と、何軒もの農家から送られてくるミルク(良質であったとしても)を時間をおいてから使う規模の大きいところとは大きな違いがある、とFさん。


自然の凝固剤、レンネットで固まってきたチーズを櫛のような器具で丁寧に攪拌します。
塵取りのようなものでゆっくり混ぜて、良い状態になったら麻布で集めます。


良い状態を見極めるには触感と食感。
ゴムのように弾力が出て噛むと歯がキュッキュッというのが良い状態です。
これは確か、ちょっと足りなかった状態。ちなみに味はあんまりしません。敢えていえばモッツァレラチーズとカッテージチーズの間みたいな感じでしょうか。


セルクル(木の枠)にチーズを詰めます。
鍋の底に少しモロモロ(それがチーズになるんですが😅)が残っているのでもう一度集めて足します。そしてプレスし、余計な乳清(ホエイ)を搾り出します。


大型チーズであるグリュイエールやエメンタール、フランスのチーズではコンテやボーフォールなどはカテゴリー的に「加熱圧縮タイプ」と呼ばれていますが、これが「圧縮」の過程です。


デモンストレーション中のFさん。
作業が丁寧、確実で説明もとても上手です。チーズ作りに対する愛情が伝わってきます。


搾乳量は日にもよりますが、例えば300リットルのミルクからだと最終的に30kgのチーズが出来ることになります。


酪農学校の生徒さんが研修に来ていた日もありました。


残った乳清の一部を魔法瓶に入れ、レンネット(仔牛の胃の一部を乾燥させたもので凝固作用がある)のかけらをいくつか漬けておきます。これは次回のチーズ作りに使います。


ミルクの重量のほとんどはホエイです。栄養が残っているので牛さんの飼料に混ぜるけれど、いっぱいあり過ぎるので捨てちゃうそう。
リコッタチーズやカッテージチーズのようなチーズを作ることもできるのに、ともったいなく思いますが、作る手間がいるし高くは売れない、というか需要もあまりないそう😓


さて、Fさんも一緒にすぐ近くの別の建物に移動します。

可愛いピンクの建物。Sさんの家族の持ち物だそうです。


前にOさんが手伝いに来てチーズ熟成カーブに改造されました。


SさんとFさん(とOさんも時々😅)が力を合わせて作ったチーズが並びます。
熟成期間は最低6か月。冬に作ったチーズが食べられるのは早くても夏になります。


最初のうちは塩水を含ませた濡れ布巾で表面を拭きながら時々ひっくり返すなど、手間が要ります。
Fさんが状態をチェック。細かいアドバイスをします。
せっかく頑張って作っても熟成期間に失敗して美味しくなくなってしまうこともあるそうなので気が抜けません。


農家からすぐのところにあるスキー場のレストランにみんなでお昼を食べに行きました。


小さなスキー場なので、これが唯一の商業施設です(^^;)


赤ワイン、オニオンスープ、ステーキ&ポテト、レモンタルトというシンプルでおいしいランチをご馳走してもらいました(≧∇≦)


夏に熟成期間を経たこの農家のチーズを食べてみるのが今からとても楽しみです。


お読みいただいてありがとうございました。

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