フランスで山歩き

仏リヨン在住、40歳を過ぎて再び山に目覚めた元ワンゲル部員。週末になるといそいそと山に出かけています。

今年初めてのヴェルコール山塊へ(後半)

あまりたくさん歩きたくも運転したくもなかった水曜日、近場でお手軽な半日コース、と思って出かけたヴェルコール山塊北部のアルク峠とピック・サン・ミッシェル。高低差も少なく(峠までで約500m、山頂までで約750m)、道も分かりやすいのであまり山に行かない人に「どこか簡単に登れて景色もきれいなところある?」と聞かれたときに勧める場所のひとつでもあります。


春から秋にかけての週末には多くのハイキング客が訪れるコースですが、まだ雪は結構あるし平日、しかも朝も早い目の出発だったので山頂まで誰にも会いませんでした。山頂でくつろいでいると年配の男性ががひとりで登ってきて十字架より少し下の辺りで休憩されていたので出発するときに話しかけてみました。気さくな方でしばらく話をしました。すぐ下の村に住んでおられるそうなのでおそらく何十回何百回とここには来られているんだと思います。


南方面にはデヴォリュ山塊が一列に見えます。
左端の少し丸いのが山塊最高峰のオビウ、中央の少し右を向いたとんがりが2番目に高いグラン・フェラン。もう少し右の平たいのがピック・ド・ビュール。そのさらに右隣のふたつセットでとんがってるのが今月初めにすぐ隣の山まで行ったあと登るかどうか迷って諦めたテット・ド・ガルヌジエとその相棒ロック・ド・ガルヌジエ。


サヴォアはグランド・ルース山塊方面。


そしてすぐ北にはシャルトルーズ山塊。


さんざん写真撮ってパノラマを満喫して仕事中の同僚に写真送りつけてもまだ10時です。コーヒーとおやつ休憩の時間だと思うのですが、じゃあこの後どこで昼ごはん食べる?山下りてから??という問題に直面し・・・風もなく暖かいのでこの素晴らしい景色の中でめっちゃ早い昼ごはんに(^^;


食後には日本の100均でハイキング用にと買ったドリップコーヒーです。


山頂で1時間ちょっと休憩しましたが、さすがにもういいです(^^; 雲海もどんどん薄れてきました。


頂上からなだらかな坂を真下に下りて森の道に合流して周回しようと思っていたのですが、まだ11時になるかならないか。今日は楽な半日コース、と思って来たけれどお昼とかに駐車場に戻ってしまう習慣がないので(別にこの後予定もないし)、無理やり行程を引き延ばすことに。
とりあえず北側へ尾根伝いに歩いていけそうなのでそのまま進みたいと思います。


・・・何気にずんずん歩き出したんですが、尾根の部分に再び入るまでに通らなければならない雪が残った坂の部分が案外急傾斜(゚Д゚;) しかしもう手遅れというか戻るのも渡り終えるのも同じくらいのところまで来てしまいました。アホ過ぎる・・・
雪が硬くて滑るので一歩一歩が怖い・・・今更だけどスノーシュー付けます。アイゼンがいいけど車に置いてきてしまいました。スノーシューも歯がしっかりしてるのでないよりはずっとましです。大きな動きをすると滑り落ちてしまいそうで装着する動作にもひとつひとつに緊張しました(;´Д`) 今日は癒され系らくちんコースのはずなのにいつの間にか自らをドキドキコースに陥れています。


だいぶ坂が緩やかになってきました。
また雪のないゾーンに入るのでスノーシューを外さないといけません。


左側を見るとランス・アン・ヴェルコールのスキー場が。これでは営業できてなさそうです。先ほど山頂で話した地元の方も何十年この地に暮らしているけどここまで雪がない年は珍しい、と言っておられました。


ついさっきまでいたピック・サン・ミッシェルの山頂。


また岩々した楽しいところを登ります。


何かの山頂というわけではありませんが、このへんでやめておきます。
このずっと先まで歩いて行くことは可能らしいですが、少し難易度が高そうです。雪が完全に融けてからチャレンジしてみたいと思います。


目の下に広がるのはグルノーブルの町です。
今いるヴェルコール、右側に見えるベルドンヌ、そして中央やや左に見えるシャルトルーズ、3つの山塊に囲まれています。


もう一度、振り返って。
ここと山頂との中間地点位からが下り易そうだったので少し引き返したいと思います。


どんどん下ってきました。


先ほどまでいた方向を眺めて。


岩にカメラをおいてセルフタイマーで。春の陽気で歩いているとめちゃくちゃ暑いです。滑って怪我する可能性のある斜面では我慢して上着も着ていました。


振り返った写真。左側に見える坂の部分を下りた後はこの平たい部分を北側へ歩いて行きます。
時間あり過ぎなのでここでおやつ休憩。1時くらいだったのでむしろお昼ご飯の時間ですがすべてが前倒しです。


森ゾーンに入りつつあります。
このあと道が分岐するのですが、遠回りのほうで帰ることにしました。ビンボー臭いんですが、やはり、せっかく来た山から予定があるわけでもないのにそんなに早い時間に下りるのはもったいなく思います。ってかこの時点でもうほとんど下りてしまってるんですが…
実は先ほどの坂の部分も無駄に右左と大きくジグザグしながら下りてきました(^^;


森の中を30分ほど歩いて到着した1375mの地点にあるノルディックスキーの出発地点。
もともと全く通る予定のなかった場所ですが遠回り具合がちょうどいいです。


普段ならスノーシューや徒歩の人は通られないノルディックスキーのコースなのですが雪不足で使われていないため、ここを通って駐車場方面に歩いて行けます。


約30分後。朝通った山小屋レストランが見えてきました。
今歩いてきた道ですが、地図を見て「道がある…こっちから駐車場に帰れる」としかチェックしてなかったら結構アップダウンがありました。初めどんどん下るので楽勝♪と思ったら残り半分以上は緩やかながらずっと上り坂(*_*)


最後の最後に疲れた・・・
山小屋レストランがある地点に到着。さっきのとこより標高高いし(~_~;)



あれ?テラス席から声が聞こえる・・・と覗いてみたらお客さんが結構います。
え、でも朝見た時は今日休みって書いてたけど?開いてるんだったらお昼ここで食べようと思ったのに!!


これ。朝見た案内の紙には今週の休みはLUNDI(月)MARDI(火)と MERCREDI(水)って書いてました(今日は水曜日)。


で、これ今山小屋レストラン前の行先案内の表示板に張ってある紙。
今週の休みは LUNDI(月)MARDI(火)とJEUDI(木)
ヽ(`Д´)ノ ヽ(`Д´)ノ ヽ(`Д´)ノ
その日になってから変える???
もうお昼ご飯食べちゃったよ~・・・


テラスは日当たりがよく、お客さんは特にハイキングやスキーをしにきたわけでもないようなごく普通の恰好の人が多く、駐車場から30分以内という立地条件だし単にお昼ご飯を食べに来ているという印象を受けました。
がっくりしすぎて、楽しそうにしているお客さんがいっぱいのテラスの写真はなしです。


山小屋レストランから駐車場までの道。さらに何人かとすれ違いました。皆さん山小屋レストランに行くのか、雪が少なく踏みならされて歩きやすいそこら辺を少し散策するだけなのか、かなりカジュアルな格好です。
スノーシューひっかけた重装備?のわたしはそんなほぼ街着のカップルに話しかけられました。「えっ、スノーシューいりますか?」いや(山頂行かないなら…行きそうにもないし…)、いらないですよ(^^;


2時半。駐車場に到着。
朝わたしの他に1台しか停まってなかった駐車場がこんなことに(;゚Д゚)
帰りに何人かすれ違ったのでハイキングに行った人もいるにはいるようですが、ほとんどは山小屋レストランのお客さんだと思います。


ここから高速を使ったら1時間半で帰れるんですが、時間もたっぷりあることなので久々に地道で帰ろうかと思います。


まずは峡谷になってる道を通ります。アドベンチャーっぽくてワクワクします。


チーズ王国であるサヴォアの山々に比べるとチーズの生産地であるイメージのないヴェルコールですが、あまり有名ではないもののAOP(原産地呼称保護制度)に指定されているチーズ「ブルー・デュ・ヴェルコール・サスナージュ」があります。サスナージュは麓の町の名前です。生産量も少なければ生産エリアも狭く、農協1軒、農家9軒のみによって作られているそうです。
AOPのHPによると年間生産量は約200トン。同じAOPチーズでもボーフォールが年間4千500トン、コンテは4万8千トン生産されているのと比べるといかに細々と作られているかが分かります。ちなみにボージュ山塊でのハイキングの帰りに農家でよく買うトム・デ・ボージュは800トンだそうで、これもAOPチーズの中ではとても少ない生産量と言えます。


峡谷を抜けてすぐの村に「この先にチーズ農家あり」の看板があったので来てみたのですが、誰もいないようです。前の看板に書いてある農家の名前から電話番号を調べてかけてみたら留守電。どうやら夕方の搾乳の時間以外は売ってもらえないようです。あとは前もって連絡しておくか。
がっくりうなだれて農家の前で停車していると、向かいのあぜ道からものすごい勢いで大型トラクターが下りてきました。「ひゃ~潰される」と焦りましたが、トラクターは急ターンして農家の敷地へ。
今、10秒前に聞いた留守電の声の主であるこのチーズ農家のご主人でした。


ご主人、こんなでかいトラクターに乗って登場されました。


説明すると「じゃあ5分ほど待っててください」と言い残し、何やら作業をしておられるので、その間農家の周りをぐるっと歩いてみました。


すてきな車の隣に停めさせていただきます。


ニワトリがコッココッコと追いかけっこしてました。


ここの部分がブティックになっています。


オーガニックの認定を受けているチーズ達で、メイン商品は3種類のようです。
左がブルー・デュ・ヴェルコール・サスナージュ。中央が農家の名が付けられたハードタイプのチーズ、ラピーユ。右がサヴォアでよく作られているようなタイプのチーズ、トム。


こんな小さなチーズもありました。サン・ソルナンと名付けられています。
ヴェルコールからあまり遠くないところで作られているサン・マルスランを彷彿させる大きさと見た目です。サン・マルスランはリヨンでは非常によく食べられているチーズでその需要からか、今日ではほとんどが工場生産となっています。


ブルー・ド・サスナージュ(1998年にAOPを取得する以前には「ヴェルコール」は付かず、単にそう呼ばれていました)以外は初めて聞くチーズです。それもそのはず、この農家独自で作って名付けてるものなのです。


サスナージュは買おうと決めていましたが、他にも買って帰りたいな・・・
ハードタイプのはサスナージュよりも高い値段が付いてるけど、それだけおいしいのかな…?味見させてもらうことに。・・・ウッ。なにこれ、おいし過ぎるΣ(゚Д゚)
めちゃくちゃ味わい深いです。ボーフォールみたいにクリーミーな後味ではないのですが敢えて似た味わいのチーズを探すとすれば、スイスのフリブールとかアッペンツェルとか…シャープな旨味、と言いましょうか。結局サスナージュよりもこちらの方をたくさん買ってしまいました。


コンクールでの受賞記念プレートがいくつも壁に。


たくさん買えて満足満足。
農家を後にし帰途につきます。あっ、地道ね、地道・・・癖で高速に入らないように気を付けないと。。


普段高速から見るのと全く違う景色です。
こんなのどかなところをちまちま運転して帰ってきてもまだ夕方でした。いつもは早くても7時半、8時、下手すると10時11時に疲労困憊で帰宅ということもあるのですが、全く疲れることもなく早い時間に帰れたので学校から帰って来た子供たちとゆっくりすることが出来、とっても充実した休日でした。


おうちに連れて帰った子たち。パッケージに入ってるのはフェッセルと呼ばれる、ほんの少し水切りしただけのフレッシュチーズ。
サスナージュは味見しないで買ったけど、これも今まで食べたものよりずっと美味しかったです。小さなチーズも意表をついたおいしさ。これでひとつ1,3ユーロ。。もっと買えばよかった!!子供たちも初めて食べるちょっとマニアックなチーズに大喜び。


フェッセルにはお砂糖をかけてデザートに食べました。美味し過ぎて長男はふたつ目おかわりしてました。


お気軽コースの割にパノラマや雲海を楽しめ、美味しいチーズを作る農家にも出会えて大満足の1日でした。





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